“子供の頃から何か一つのことにのめり込み高速道路を疾走する人はそれほど多くない.仕事を通して自分のやりたいことを見つけ,実力をつけて一歩一歩成長していきたいと思う人は,まずどこかの組織に所属することからすべてが始まる.そのときに大切なのは,自らの傾向ときちんと向き合って,勤める組織を選ぶことである.
次に3つのことを組織選択にあたって理解しておくといい.
(1)「大きな組織」は,「大きな組織」ならではの強み,つまり巨大であることそれ自身が強みになる事業や行動を選択し集中する傾向が強くなり,「大組織適応性にすぐれた人たち」(第3章)がサバイバルしやすい世界にますますなっていく.
(2)「大きな組織」は入りにくく,いったん外に出たら再び入るのが難しいから,出にくい.一方,小さな組織は入りやすく,出やすい.「小さな組織」は,学歴や経歴より「いま何ができるか」が問われる傾向がある.
(3)活力ある「小さな組織」にはこれからとても大きな可能性がある.しかし「小さな組織」は「大きな組織」に比べて,かなり当たり外れが大きい.入ってみなければそれがわからない.しかも時が経つにつれて,組織の性格や雰囲気が変質していくリスクが大きい.”
「ウェブ時代をゆく」梅田望夫著 p.188
“人間の側から見たらほぼ無限とも言うべき情報が共有されると,「出題範囲のある試験の競争」や「役割を与えられた範囲での競争」とはまったく違った,やってもやってもさらにその先がある「対象への没頭の競争」になる.そしてオープンソース・プロジェクトでは,そういう「没頭の競争」の勝者たる実力者,つまりコミュニティへの貢献度の高いトップ・エンジニアに,プロジェクトにおける権限が付与される組織メカニズムが自然に発生した.”
「ウェブ時代をゆく」梅田望夫著 p.181
“特に「けものみち」においては,自分が興味を持って考えているもやもやとしたことを,相手に合わせてわかりやすい形に構造化してコミュニケーションする能力が重要になる.「けものみち」は皆それぞれが,強みや「好き」な領域を組み合わせて生きる世界なので,「お前は何をやっているのか」と問われたときに,相手にわかるようにコミュニケーションできないと価値が生まれず,そこからより大きなことにつながっていかない.そんな構造化能力,コミュニケーション能力は,このオープンな知的生産プロセスで磨くことができると思う.”
「ウェブ時代をゆく」梅田望夫著 p.162
“本章冒頭で「「好き」を見つけて育てるための思考法は何かないのだろうか.本章ではこの「やさしくない」問題に挑戦してみたい」と書いた.
突き詰めて言えばそれは,戦略性と勤勉ということに行き着く.自分の志向性に正直になり「好き」を見つけるための努力をこつこつと続け,「好き」なことの組み合わせを見つけたら(創造的な組み合わせが見つかればサバイバルできる確率は高くなる),面倒なことでも延々と続ける勤勉さと,それを面倒くさがらない持続力がカギを握る.私が何とか「けものみち」でサバイバルしてきたことについて,私自身が振り切って頭に浮かぶ要因は,「好きなことをやり続けたいという執念によってドライブされた勤勉」以外には思いつかない.こつこつと丁寧に細かなことを積み上げながら毎日を送ってきたことに尽きる.”
「ウェブ時代をゆく」梅田望夫著 p.141
“ロールモデル思考法は「ブログを書く」こととじつに親和性が高い.もともとブログとは,ウェブログ(ウェブの記録)を語源としており,「ネット上で面白かったサイトにリンクを張りつつ感想を書く」ことをルーツに発展してきた.サイトに限らず,人や本やニュースなどの情報との出会いの中で感じる「面白かった」という直感こそが,ロールモデル思考の発端である「自分と波長の合う信号を探す」ことに他ならない.それをブログで記録し続けることは,ロールモデルの引き出しを増やしていくことになる.同時にそれが志向性を同じくする人々と出会う可能性を高め,そのネット上での交流がまたロールモデルの引き出しを増やす循環を作り出し得る.”
「ウェブ時代をゆく」梅田望夫著 p.137
“「好きなこと」「向いたこと」は何かと漠然と自分に向けて問い続けても,すぐに煮詰まってしまう.頭の中のもやもやは容易に晴れない.ロールモデル思考法とは,その答えを外界に求める.直感を信じるところから始まる.外界の膨大な情報に身をさらし,直感で「ロールモデル(お手本)」を選び続ける.たった一人の人物をロールモデル(お手本)」を選び続ける.たった一人の人物をロールモデルとして選び盲信するのではなく,「ある人の生き方のある部分」「ある仕事に流れるこんな時間」「誰かの時間の使い方」「誰かの生活の場面」など,人生のありとあらゆる局面に関するたくさんの情報から,自分と波長の合うロールモデルを丁寧に収集するのである.”
『ウェブ時代をゆく』梅田望夫著 p.120
“能動的に働きかければ必ず何かが返ってくる「能力の増幅器」(しかし自分から働きかけない限り何も起きない)たるウェブ進化を前にしたとき,「働き者」と「怠け者」の差は大きく増幅される.「働き者」タイプの人は,それほど案ずることなく「けものみち」をすいすいと歩いていけるのではないか.ネット空間から即座に反応が帰ってくることに興奮したり,ミクシィで友だちをたくさん作りそこから生まれる新しい関係を積極的に面白がっている「働き者」タイプの人たちは,「そんなことなにが面白いの」と言っている「面倒くさがりや」タイプの「怠け者」よりも,あきらかに「けものみち」向きである.これまでの日本社会は「頭のいい人」対「悪い人」,「記憶力のいい人」対「悪い人」という軸で社会が動いてきた面が強いが,「けものみち」では「働き者」対「怠け者」が軸となる.「けものみち」で「頭がよければいいだろう」というのは通用しない.何かを知っている,何かを記憶しているというタイプの頭のよさは,あまり重要ではなくなるからだ.”
「ウェブ時代をゆく」梅田望夫著 p.110
“次章ではそんな私の経験も交えながら「けものみち」を生き抜く思考法を考えたいのだが,一言で言えば「けものみち」とは,高速道路を疾走するのに比べると,まあ何でもありの世界である.好きなこと,やりたいこと,やりたくなくてもできることを組み合わせ,ときに組織に属するもよし,属さぬもよし,人とのさまざまな出会いを大切にしながら「個としてのストーリー」を組み立て,なんとかゴチャゴチャと生きていく世界だ.”
「ウェブ時代をゆく」梅田望夫 p.102
“シリコンバレーはアントレプレナーシップに溢れた土地柄でその歴史が退席しているため,世の中で通用している言葉の定義より苛烈で凝縮されたエッセンスを私は嗅ぎ取ってきた.アントレプレナーシップの真髄とは,「自分の頭で考え続け,どんなことがあっても絶対にあきらめない」ということに尽きるのだ.「勝った者」とは「勝つまでやった者」なのである.一つの専門を極めることは,とにかく長い長い終わりのない道のりである.”
「ウェブ時代をゆく」梅田望夫 p.97
“しかも日本社会は,エスタブリッシュメント層の中枢に坐る大企業経営者,官僚,マスメディア幹部の大半が,いったん属した組織を辞めたという個人的経験を全く持たない.だから「大組織を離れる」イコール「路頭に迷う」「人生のレールをはずれる」みたいな極端な表現をカジュアルに口にし,それがあたかも真実であるかのような錯覚を人々に与える.実際彼らの大半は「目の前にあるすべきことに情熱を注ぐこと」ができた人であり,そうでない人への想像力を欠いているのだ.「好きを貫いて生きていけるほど,世の中,甘いもんじゃない」という大人の言葉は,日本社会の中枢にいる人々の傾向と表裏一体をなすものである.”
「ウェブ時代をゆく」梅田望夫著 p .92