“しかし忘れてはならないのは「ネット世界」は「リアル世界」以上い,「自助の精神」が必要な世界だということである.学習するにせよ,志向性を探求するにせよ,「志向性の共同体」を率いるにせよ,知的生産するにせよ,より良き社会を作る為に努力するにせよ,「自助の精神」に基づく「勤勉の継続」が,リアル世界以上に求められるということだ.”
「ウェブ時代をゆく」梅田望夫著 p.232
“モートンは「”Linus氏の右腕”が語るGoogleでの仕事」(ITPro)というインタビュー記事で,「Linuxカーネルのメンテナとしての仕事と,Googleのための仕事には,それぞれ何%の時間をあてていますか」という質問に「90%はLinuxカーネルのパブリックな仕事にあてています.10%はGoogleの仕事にあてています」と答え,(中略)
私はこの現象を少し一般化して,個がネットの可能性を最大限に活かした「パブリックな仕事」で大きな存在意義を世界に示すとき,企業がその人物を副次的効果を求めて雇用し「パブリックな仕事」を継続させる,そんな新しい「雇用のかたち」の萌芽と考えたい.”
「ウェブ時代をゆく」梅田望夫 p.212
“「時代の変わり目」を生きるためにいちばん重要あのは,「古い価値観」に過剰適応しないことである.そのことに自覚的かつ意識的であってほしい.どんな変化であれ,それが天災や事故のような突然の打撃ではなく,ゆっくりと皆に訪れるものなら,それは「荒海に飛び込む」ようなものではなく「雨の日に自転車に載る」くらいのことなのだ.すでにそちらの世界で軽やかにやっている人もいるごく普通のもうひとつの世界なのだ.しかし「古い価値観」に過剰適応してしまった人にはそう思えない.「はじめの一歩」を踏み出す前に身体がすくんで,新しいことへの挑戦を自分の心が縛ってしまう.その呪縛をできるだけ若いうちに解いてほしいと思うのである.”
「ウェブ時代をゆく」梅田望夫 p.199
“「大組織適応性」がそれほど高くない人は,小さな会社で働き,実力をつけながら,少しずつでも良い場所に移っていけばいい.小さな会社では,比較的早く大きな責任が与えられて成長できる場合が多いからだ.ただそのときに重要なのは,いったんそちらの道を選んだからには,一つの会社に依存せず,常に「次の場所はどこか」と意識しながら生きることである.そのとき,自分が所属する「小さな組織」の将来性を判断するリトマス試験紙として,情報共有と競争力の関係についてその組織がどの程度理解があるかを観察するといい.情報共有に関する小さな提案をしてその反応を見れば,その組織の完成の新しさを判断するとてもいい基準になる.”
「ウェブ時代をゆく」梅田望夫著 p.188
“子供の頃から何か一つのことにのめり込み高速道路を疾走する人はそれほど多くない.仕事を通して自分のやりたいことを見つけ,実力をつけて一歩一歩成長していきたいと思う人は,まずどこかの組織に所属することからすべてが始まる.そのときに大切なのは,自らの傾向ときちんと向き合って,勤める組織を選ぶことである.
次に3つのことを組織選択にあたって理解しておくといい.
(1)「大きな組織」は,「大きな組織」ならではの強み,つまり巨大であることそれ自身が強みになる事業や行動を選択し集中する傾向が強くなり,「大組織適応性にすぐれた人たち」(第3章)がサバイバルしやすい世界にますますなっていく.
(2)「大きな組織」は入りにくく,いったん外に出たら再び入るのが難しいから,出にくい.一方,小さな組織は入りやすく,出やすい.「小さな組織」は,学歴や経歴より「いま何ができるか」が問われる傾向がある.
(3)活力ある「小さな組織」にはこれからとても大きな可能性がある.しかし「小さな組織」は「大きな組織」に比べて,かなり当たり外れが大きい.入ってみなければそれがわからない.しかも時が経つにつれて,組織の性格や雰囲気が変質していくリスクが大きい.”
「ウェブ時代をゆく」梅田望夫著 p.188
“人間の側から見たらほぼ無限とも言うべき情報が共有されると,「出題範囲のある試験の競争」や「役割を与えられた範囲での競争」とはまったく違った,やってもやってもさらにその先がある「対象への没頭の競争」になる.そしてオープンソース・プロジェクトでは,そういう「没頭の競争」の勝者たる実力者,つまりコミュニティへの貢献度の高いトップ・エンジニアに,プロジェクトにおける権限が付与される組織メカニズムが自然に発生した.”
「ウェブ時代をゆく」梅田望夫著 p.181
“特に「けものみち」においては,自分が興味を持って考えているもやもやとしたことを,相手に合わせてわかりやすい形に構造化してコミュニケーションする能力が重要になる.「けものみち」は皆それぞれが,強みや「好き」な領域を組み合わせて生きる世界なので,「お前は何をやっているのか」と問われたときに,相手にわかるようにコミュニケーションできないと価値が生まれず,そこからより大きなことにつながっていかない.そんな構造化能力,コミュニケーション能力は,このオープンな知的生産プロセスで磨くことができると思う.”
「ウェブ時代をゆく」梅田望夫著 p.162
“本章冒頭で「「好き」を見つけて育てるための思考法は何かないのだろうか.本章ではこの「やさしくない」問題に挑戦してみたい」と書いた.
突き詰めて言えばそれは,戦略性と勤勉ということに行き着く.自分の志向性に正直になり「好き」を見つけるための努力をこつこつと続け,「好き」なことの組み合わせを見つけたら(創造的な組み合わせが見つかればサバイバルできる確率は高くなる),面倒なことでも延々と続ける勤勉さと,それを面倒くさがらない持続力がカギを握る.私が何とか「けものみち」でサバイバルしてきたことについて,私自身が振り切って頭に浮かぶ要因は,「好きなことをやり続けたいという執念によってドライブされた勤勉」以外には思いつかない.こつこつと丁寧に細かなことを積み上げながら毎日を送ってきたことに尽きる.”
「ウェブ時代をゆく」梅田望夫著 p.141
“ロールモデル思考法は「ブログを書く」こととじつに親和性が高い.もともとブログとは,ウェブログ(ウェブの記録)を語源としており,「ネット上で面白かったサイトにリンクを張りつつ感想を書く」ことをルーツに発展してきた.サイトに限らず,人や本やニュースなどの情報との出会いの中で感じる「面白かった」という直感こそが,ロールモデル思考の発端である「自分と波長の合う信号を探す」ことに他ならない.それをブログで記録し続けることは,ロールモデルの引き出しを増やしていくことになる.同時にそれが志向性を同じくする人々と出会う可能性を高め,そのネット上での交流がまたロールモデルの引き出しを増やす循環を作り出し得る.”
「ウェブ時代をゆく」梅田望夫著 p.137
“「好きなこと」「向いたこと」は何かと漠然と自分に向けて問い続けても,すぐに煮詰まってしまう.頭の中のもやもやは容易に晴れない.ロールモデル思考法とは,その答えを外界に求める.直感を信じるところから始まる.外界の膨大な情報に身をさらし,直感で「ロールモデル(お手本)」を選び続ける.たった一人の人物をロールモデル(お手本)」を選び続ける.たった一人の人物をロールモデルとして選び盲信するのではなく,「ある人の生き方のある部分」「ある仕事に流れるこんな時間」「誰かの時間の使い方」「誰かの生活の場面」など,人生のありとあらゆる局面に関するたくさんの情報から,自分と波長の合うロールモデルを丁寧に収集するのである.”
『ウェブ時代をゆく』梅田望夫著 p.120